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安部 陽子先生ーーー日本赤十字看護大学大学院 看護学研究科 教授(看護管理学)

【プロフィール】

安部 陽子(あべ・きよこ)
東京都出身。日本赤十字看護大学看護学部卒業後、日本赤十字社医療センター勤務。
2007年ミネソタ大学博士課程修了後、日本看護協会にて継続教育研修担当専門職に従事。
2011年より日本赤十字看護大学准教授
2017年より現職

趣味:読書
座右の銘:

「Fight for the things that you care about. But do it in a way that will lead others to join you」(Ruth Bader Ginsburg)

連絡先:k-abe@redcross.ac.jp

 

看護師不足の中「保健師になろう」からスタート

 

私が大学に進学した時代は、看護学部がまだ11校くらいしかない過渡期で、3年制の専門学校がほとんどでした。

 

最初は保健師になろうと思っていたので、そのための進路を考えていたところ大学進学という選択肢が候補にあがりました。

 

当時、看護師不足が社会問題になっていたこともあって、周りからの反対もあり逆風の中での進路選択でしたが、両親からの「自宅から通う」という条件を満たしていたこともあって自宅から近い日赤を選びました。

 

大学では2年間の寮生活を経験しました。

 

一人っ子で育った私は同じくらいの年齢の人たちとひとつ屋根の下で生活する経験がなく、さまざまな価値観に触れることができた日々で新鮮でした。たくさんの人たちに囲まれて生活したことで多様性を知ることができましたし、人間理解にもつながったように思います。

 

仕事の楽しさの中にある辛さから感じた看護職の職場環境への関心

 

奨学金の関係で、赤十字関連病院に3年間勤務すると学費を返済する必要がなくなることから、大学の隣にある日本赤十字社医療センターに就職し、脳外科病棟で勤務しました。

 

学生の頃から労働環境に関心があり、卒業研究のテーマは「看護師の職場環境」でした。

 

看護師になってからは、脳外科という特性もあって、ケアした分患者さんから反応が返ってくることも多く、仕事にやりがいや楽しさを感じていました。一方で、今よりも休みが取れなかったり、残業が多かったりする時代でしたし、他の病院と同様に、人間関係で辞めていく人たちもいたりして、看護職の職場環境に興味関心が強まりました。

 

特に臨床では看護師の定着に困難を抱えることがあり、中でも中途採用の場合それが顕著だということがわかり、その背景には何があるのか、何が起こっているのかを研究したいと思うようになりました。

 

 

大学院教育が整ったアメリカに留学

 

もともと大学院に行こうと思っていたので少しずつ貯金して準備を進めていました。当時、大学が少ない中での大学院はさらに少ない状況で、大学院を修了した看護管理学の研究者はいないのではないかと考え、進学先は海外を選びました。

 

英語の力が足りていなかったのでそこから英語の猛勉強を始め、たくさん投資してひたすら勉強をしました。

 

オリジナルのマグネットホスピタルの看護部長だった教員から指導を受け、修士と博士で約7年間の留学生活を経て帰国しました。

 

帰国後のキャリアについては、現場の看護の質を向上させる方法として、現場の管理職として直接的に関わるか、または研究者として看護管理者を育成することで間接的に関わるかのどちらかと考えていました。

 

しかし、一度病院を退職していたこともあり、再就職してから管理職になるまでのキャリアが描きにくかったという現実に直面し、現場で看護管理者として働くことは難しいと考え、研究者としての道を模索し始めました。

 

その間、実は貯金が底を尽きかけていたこともあり、派遣で巡回入浴のアルバイトをしたことも大きな学びでした。

 

入浴前に血圧を測ると上が70くらいしかなく、中止の提案をしたところ「これで最後になってもいいからお風呂に入れてほしい」と懇願されるなど、それまでに経験することのなかったケースに遭遇したり、訪問入浴ドライバーさんをはじめとした3~4人のチームワークを垣間見たりできて興味深い経験でした。

 

その後、日本看護協会からご縁をいただき、4年ほど研修の企画・運営・評価に携わりました。

 

実習を重視したカリキュラムが魅力の看護管理専攻

 

現在、2025年度から始まる新カリキュラムに向けて準備を進めているところですが、看護管理学領域としては研究に重きを置く大学院が多い中で、本学は2週間の臨地実習を特徴にしたいと考えています。

 

学んだ理論を自分が見た組織にあてはめる、組織をアセスメントして課題を抽出し計画をたてるなどの方法を用いて、具体と抽象を行ったり来たりします。

 

さらに他領域の人たちとのディスカッションを通して、一緒に学んでもらいます。

 

そうすることで、他者の見方がわかったり、それまであった固定観念を越えたりできると期待しています。

 

また、地域包括ケアの時代にあって医療が病院で完結しないことから、地域実習を取り入れていることも特徴の1つで、保健師のように地域をアセスメントして、それに対して課題を抽出し実践まで行うことを目指した内容となっています。

 

 

コロナ禍で一気に進んだ大学院のIT化

コロナ禍に突入したタイミングと、本学にオンライン学習管理システムとコミュニケーションツールが導入されたタイミングが重なったことで、一気にIT化が進みました。

 

そのため、自分の職場にプライバシーが保てる一室があり、講義に集中できる時間が確保できるのであれば、通学せずオンラインで講義を受けられるように変わりました。

 

より柔軟に対応できるようになったとはいえ、職場の理解や調整は欠かせませんから、必ず受験前の面談で確認するようにしています。

 

一人一人の仕事・家庭環境を考慮し両立をサポート

 

看護実践や看護管理を長く経験してから大学院に入学した院生は、大学生と違って家族や仕事に対する責任や、自分の人生を抱えているため、勉強だけに集中しづらいことが多いです。

 

それらに対して、なるべくご本人の状況に合わせて進められるように個別にサポ―トしています。

 

また、仕事を続けながら学びたいと考えている方が多く、両立するためにはどうしたらいいかという相談が寄せられます。

 

時間割の一例を紹介したり、講義はオンラインでも受講できること、また、10日間ある臨地実習についての詳細や、実習日程を柔軟に対応していることを伝えています。

 

仕事をしていると連続して10日間休みを取得することは現実的ではないため、週に1回10週間かけたり、週2回5週間かけたり、中には10日間連続で行ったりと院生の職場状況などに合わせてスケジュールを考えていくことができます。

 

どのような日程で行っても、得られる視点や意味づけなどの学びが異なることはありません。

 

そうすることで、自身の生活・仕事リズムを踏まえた上で大学院との両立生活を具体的にイメージすることができるので、入学までに準備することが可能になります。

 

大学院進学を考える看護管理者・看護管理学を学びたい看護職へのメッセージ

 

看護の職場を少しでも良くするために、自分の能力を活かしたい方、伸ばしたい方を応援します。

 

楽しく学ぶ、挑戦する、がモットーです。好奇心、探求心をもって、前向きに新しいことに取り組める方、ぜひ一緒に学びましょう。

 

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