私の学生時代
大学入学時点では看護に進むことは全く考えていませんでした。3年生に進級する時に親とも相談して何か国家資格の持てる学部をと思い、人に関心が高かったことから保健学科看護師コースに興味がわき、当時東大で唯一看護学科の教授だった先生から「看護師コースに進んでみてはどう?」と誘われたことが決め手となりました。
実習はとても楽しく、患者さんとの関わりを通してより看護師の魅力が増していき、その先生から「東大で看護を学んでいるのだから大学院に進み研究者の道はどうか」と勧められ、4年生で受験しました。しかしまずは実践を経験することが大切だと考え、2年間休学し東大病院で勤務したのち大学院に復学しました。
修士課程では、論文を自分の力でまとめ上げることに苦しみましたが、仕上がった時にそのプロセスが楽しい・やりがいがあると感じ博士課程に進みました。博士課程では、国立がんセンターの研究所に外来研究員という立場で現場に入り、治療後に再発の不安を抱え悩みながら日々を過ごす患者さんを対象にグループセラピーを実施し、私たちからの情報提供や、同じ境遇の方たちと支え合うことでQOLが高まっていくことを実証し英語論文に仕上げ、研究者として成長できた3年間でした。
現在進めている研究
院生8人とスタッフ7人の計15人が2つに分かれ、「ビッグデータの解析」と「DXの活用」に関する研究を進めています。少子高齢化で財源が狭まっていく中で、これから必要とされる分野だと考えています。
研究することの魅力と苦しさ
看護学は人を対象にすることから、数値的に有効性を確認していく医学的な側面とQOLや幸福度などの人文社会的な側面の両方を持つ奥深い学問分野で、いろいろなアレンジが可能でカバー範囲が広いことが魅力です。一方で複雑なので可視化しにくく、看護を数字で表す難しさもあります。
趣味、休日の過ごし方
3人の子育てが一段落し、自分のやりたいことに自分の時間を全て注げるという久しぶりの感覚に幸せを感じています。旅行とスポーツクラブでの運動が目下の楽しみです。
座右の銘
一生青春一生勉強(相田みつを)
在宅緩和ケア看護学分野の特徴とその魅力
【特徴】本学のカリキュラムは大学院大学という特徴があり、10ある看護分野からさらに細分化された分野を追求できるという、全国の看護学研室の中でも先駆的な取り組みをしています。5年間大学院生として研究に没頭することで、苦しみながらも研究力のノウハウの貯金ができ、それは今後博士号を取った後、大学教員になっても1人で研究できる実力をつけたり、時代の流れも汲み入れて新たな研究を進めていこうと考える土台へとつながっていきます。
【仕事との両立】他の研究室では働きながら大学院に通う方もいますが、私の経験上、片手間に研究できないという思いから、最初は仕事と両立していた方もフルタイムで大学院生をする生活になるため、私の研究室は社会人大学院生は少ない状況です。
【研究室の特徴】年齢や経験、立場に関係なく自由に意見を言える・聞ける風通しのいい研究室を目指しています。
【学生の特徴】真面目で社会の役に立ちたいという志の高い方たちが多い印象です。私の研究室では8人中2人がストレートで6人が病院や訪問看護などの臨床経験がある方たちです。20代~50代まで各年代がいることも特徴です。
【修了生の進路】修士で修了した場合は病院や在宅の現場に戻って実践することが多く、博士号を取得した場合は大学教員として着任することが多いです。
進学したいものの研究テーマが見つからない悩みと向き合う
現場で働いたり、学部の授業や実習で感じた問題意識を持ち、その分野で役立つ研究成果を上げたい、社会に役立てたいという気持ちがあればウェルカムです。最初は誰しも抽象的なテーマを持っていますが、それぞれの強み・弱みを見定めて一緒に方向性を示していくことで、焦点化できます。そのプロセスをコツコツ努力し続けられる人であればぜひ来ていただきたいですね。
入試で確認したいこと
【小論文】研究分野の知識が最低限あるかを確認する。最低限の知識と論理展開が文書として表現できるか、それが言葉として表現できるかをみています。
【面接】質問に対して理路整然と答えられるかという思考と、その表現ができるかを確認しています。
【英語】大学院は英語論文を読み英語論文を書くため、英語ができるか否かで進捗は大きく変わります。ストレートで進学してくる学生と、例えば20年間臨床で働いていた方とではある程度の苦労は必要になると考えています。
大学院進学を考える方たちへのメッセージ
看護は学問としての歴史はまだ浅いですが、研究を積み上げて今まで確立されていなかったケアを発見し、現場で実践されることで看護の質を高めていくことができます。看護は病気にかかる前の予防から闘病中の方、治療が一旦終わりその後の療養生活を過ごす方などあらゆる状況の方が対象になるので、社会的ニーズは今後より一層高まっていきます。
しかし、現場の役割を可視化させ社会に伝える翻訳者が不在です。その役割を担うのが私たち研究者だと思うので、そこに魅力を感じる方はぜひ仲間になっていただきたいと思います。